誰もが安心した豊かな老後を過ごせる明るい高齢社会の実現を目指して
誰もが安心した豊かな老後を過ごせる明るい高齢社会の実現を目指して
皆さんはじめまして、介護事業者による横断的・全国組織となる全国介護事業者連盟(介事連)の理事長をつとめています斉藤正行です。日本はすでに世界一の高齢化率(2020年時点では28.7%)となっており、超高齢社会に突入しています。今後更に高齢化は加速することとなり2040年代には高齢化率40%を超える人口推計となっています。認知症問題、孤独死、老老介護といった様々な問題を解決するためには、手厚い社会保障制度の充実が不可欠でありますが、他方で現役世代人口は急減することとなり、社会保障費は適正化を図ることが至上命題ともされています。そのような情勢の中においても、「誰もが安心した豊かな老後を過ごせる明るい高齢社会の実現」に向けて本コラムにおいて様々な情報をお届けしていきたいと思います。
さて、現在、世の中は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて生活様式が一変しています。社会のあらゆる場面で制約を受けた生活を強いられることとなり、大きな影響を及ぼしています。介護業界においても大変厳しい情勢が続いており、高齢者と基礎疾患のある方ほど重症化リスクが高いことは周知の事実であり、他の業界以上に細心の注意を払って、介護現場では日々の介護業務に従事をしています。2021年は年初より、再度の緊急事態宣言が発出され、都心部を中心として、医療体制の切迫状況は厳しさを増しています。実際に、都心部では高齢者のPCR検査陽性者が入院できない状況にあり本当に厳しい状況であります。世間では「医療崩壊を食い止めなければいけない」「医療従事者への感謝を」との報道が盛んに行われておりますが、皆様には是非とも、医療崩壊を防ぐための水際には、介護崩壊を防ぐ必要があり、医療従事者と同じく介護従事者の献身的な頑張りによって、日本では欧米諸国のような感染爆発に至っていないということを知ってもらいたいと思います。本当に深刻な事態が続いている状況にありますが、この正念場を何としても皆さま方とともに、国民が一丸となって乗り越えていきたいと思います。
さて、介護事業者にとっては新型コロナウイルス感染症対策とともに、現在の最重要課題は4月に行われる介護報酬改定への対応です。介護は医療と同様に介護保険制度に基づき介護サービスが提供されています。介護が必要となった要介護高齢者は所得に応じて1割~3割の介護費用を自己負担し、残りは40歳以上の国民が毎月支払う介護保険料によってまかなわれ介護事業者へ支払われることとなります。その介護事業者へ支払われることとなる介護報酬については3年に1度の見直しが行わることとなり、本年4月が3年ぶりの介護報酬改定見直しの年であります。昨年末には介護報酬単価は、プラス0.7%で決定を致しました。うち0.05%はコロナ対策費として6カ月間の時限措置となります。私はこの数字は介護現場にとってはそれなりに満足のいく結果であったと感じています。もちろん、コロナ禍による影響の大きさを考えれば1%以上の大幅プラス改定を望む声が多かったわけではありますが、この0.7%にはその数字以上の重みがあると感じています。財務省によるマイナス改定への圧力は、コロナ禍においても例年以上の強さがあり、プラス改定を実現出来たそのこと自体が大きな結果であります。加えて、プラス改定の幅についても、前回(2018年)改定のプラス0.54%が天井であるというのが大方の見立てであり、そこから僅かではありますが更なるプラスの上積みを出来たことには大きな意義があると思います。
コロナ禍においては介護事業者の経営的な影響は大変に大きく、もともと収益性の低い介護事業においては、深刻な打撃へと繋がっており、介護事業者は過去最大件数の倒産ともなっています。そのような中で、皆様方には、是非とも介護事業者への支援、評価が必要であり、そのことが安心の老後生活の補償へと繋がることを知って頂きたいと思います。今後とも本コラムにおいて様々な視点から論考していきたいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。