すまふくマガジン

「命と財産」を守る第一の砦

更新日 : 2021.12.07

「防災住宅研究所」はあらゆる災害から家族の命を守るのは「家」であることを提唱し、災害から1人でも多くの命を守るため「防災住宅」の必要性を啓蒙するために設立しました。

念願の我が家を購入する時、まさか我が家が災害に襲われ、自宅が倒壊することを考える方はいませんよね。

住宅購入時に、木造住宅であれば白蟻対策や年数が経つとリフォーム、あるいは建て替えなどのメンテナンス費用のことは多少なり意識を持っている方もあるようですが、災害による修繕費用を考えて購入する人は、ほとんどいないのではないかと思います。
 住宅には大別すると地震・津波、台風、ゲリラ豪雨、土砂災害、竜巻、火災と6つの災害が襲ってきます。白蟻は災害ではありませんが、住宅の基礎を食い荒らし、破壊していくことを考えると「住宅を襲う災害」に加えてよいかもしれません。日本は地震をはじめ、台風など災害が非常に多い国土です。国土面積が世界のわずか0.25%でしかないのに、世界で発生するマグニチュード6以上の地震のうち、実に22.9%が日本で発生しています(1994年~2003年 内閣府www.bousai.go.jp/jishin/pdf/hassei-jishin.pdf)。まさに地震大国です。スイスの再保険会社スイス・リー(Swiss Re)は、2013年の「自然災害で最も危険な都市ランキング」の統計では、東京・横浜は1位、大阪・神戸は4位、名古屋が6位など日本の大都市は世界でも突出して災害リスクが高いのです。

温暖化の影響もあり、台風も年々、巨大化しています。マスコミ報道の「50年に1回の大きさの台風です」というコメントをなぜか毎年のように聞かされています。

近年は風水害が脅威をもたらせています。「平成30年7月豪雨」では広島県内で3000か所以上の土砂災害が発生し、岡山県では倉敷市真備町が河川の決壊によって街が水で浸かり多くの命が奪われています。同年にはその後台風21号、24号、25号が襲い、関西国際空港に通じる道路が風雨によって流されてきたタンカーがぶつかり破壊された映像は記憶に新しいところです。9月には北海道胆振東部地震が発生。北海道で観測史上初の震度7を記録し、地震の揺れによって土砂災害が発生し、家屋がその下敷きになり多くの命を失っています。令和に代わってからも元年の台風15号、19号は千葉県をはじめとする関東地方に多くの爪痕を残しました。令和2年には「令和2年7月豪雨」と呼ばれる豪雨によって熊本県の球磨川が氾濫し、人吉市、球磨村等で甚大な被害をもたらしています。

さらに今や白蟻も外来種の存在が確認され、火災は今なお毎年4~5万件発生していますが、その約60%は住宅火災です。悲しいかな、その住宅火災の原因1位は「放火」というのですから、悲しい時代です。

さて私は阪神淡路大震災以降、数多くの災害現場を視察してきましたが、確信をもって言えることが2つあります。
まず一つ目は、日本の住宅は「災害に対して弱すぎる」ということです。毎年のように災害に襲われ、住宅が倒壊し、多くの大切な命を失っているのに「無力過ぎる」、ということです。

平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)をみると熊本地震では「新耐震基準」でありながら「全壊」した住宅が99棟もありました。中には「地震に強い」と宣伝をしている住宅メーカーの住宅もその中にあったほどです。「耐震等級3」の住宅であっても損壊しているのです。

イメージ

熊本県上益城郡益城町は震度7が2回襲い、多くの木造住宅が倒壊した

多くの住宅メーカーは「地震に強い」ことを謳い文句にしていますが、「何が強い」のか、明確な基準がなくいままにその言葉を使用しています。TV局はCM等に関しては厳しい考査基準があるのになぜか「強い」に対する基準がないのです。私は調査のため熊本地震後、熊本市内に住みましたが、こんなTVCMが流されていたのを見て驚きました。「わが社の住宅は熊本地震で倒れませんでした!」とナレーションで言っているのです。何も知らなければ「ふ~ん、あの地震で倒れなかったんだ、強いな」と思うかもしれません。それが狙いなのでしょうが、例え「全壊」していたとしても「倒壊」がなかっただけなのかもしれないのです。多くの住宅メーカーは「阪神淡路大震災、熊本地震で全壊、半壊はありませんでした」とカタログ等に記載しています。皆さん、これを見て決して「強い」と思わないでください。これは「全壊・半壊」はなくても「一部損壊」はあったということなのです。もしその一部損壊した住宅が「我が家」だったら、「強い」と言えるでしょうか。私は「全壊」「半壊」「一部損壊」もない「無傷」こそ、災害に対して「強い」と言えるのではないかと思っています。

 私の両親は共働きで何年も生活し、ようやくためたお金で田舎から大工を呼び寄せ、柱は檜、床柱には黒檀、屋根には石州瓦をのせた自慢の我が家を建てました。ところが、建ててから5、6年で大雨によって、次第に家が傾き始め、戸が閉まらなくなりました。ついには住み始めてわずか10年で手放すことになりました。悲劇はまだ続きました。とりあえず移り住んだ借家が、火事で全焼してしまったのです。
まさに、住宅貧乏です。

災害は他人事ではありません。いつ、我が身に降りかかってきてもおかしくないのです。私の両親と同じ思いをして欲しくない、ましてや住宅が命を奪うようなことになってはいけないと、真に「命を守る住宅」とはどのような住宅なのかを追求し、情報発信をしていくために一般社団法人 防災住宅研究所を設立させていただきました。
 住宅は非常に高価な買い物です。一生をも左右しかねない買い物です。
 住宅は安さやデザイン性に惑わされることなく、襲い来る災害に対し「無傷」の実績で立ち向かい、家族の「命と財産」を守る第一の砦でなければいけないということをわかっていただけましたでしょうか。

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